第4回・90分・精神看護学各論
身体をケアする Part 1
〜「訴えられない患者」の身体を、どう見抜くか 〜
講師:古賀 慎一(精神科看護師)
2026年8月7日(金)/ 佐賀市医師会立看護専門学校 2年生
第108回 看護師国家試験 より(改題)
統合失調症の慢性期患者で
身体合併症のリスクが最も高いのはどれか。
- 1痛風
- 2結核
- 3メタボリックシンドローム
- 4骨粗鬆症
🤔
答えは…
この90分の 最後 で明らかになります 🌱
📊 衝撃の事実
統合失調症患者の平均寿命は、
一般人口より
15〜20年短い
その原因のNo.1は、自殺ではなく
身体合併症。
🤯 「精神」の看護師こそ、「身体」を見られないといけない。
SECTION 1 ・ 15分
精神疾患患者の
身体的特性
— なぜ「見えにくい」のか —
🔍 なぜ訴えられないのか?
5つの理由
- 🧠 精神症状:身体感覚の歪み(陰性症状・幻覚妄想)
- 💊 薬の影響:抗精神病薬の鎮静・痛みの感じにくさ
- 😶 表現の困難:「お腹が痛い」と言えない
- 👤 関係性の問題:医療者を信頼できない過去
- 🚫 医療側の偏見:「精神症状だろう」と片付ける
💡 看護師の 観察力 が、患者さんの命を守る最後の砦。
👁️ アセスメントの工夫
「言葉」以外で読み取る
- 🎭 表情・姿勢の変化:いつもと違う表情・歩き方
- 🍽️ 食事量・水分量:急な減少は要注意
- 🚽 排泄パターン:便秘は服薬の副作用+合併症の入口
- 💤 睡眠の変化:訴えなくても、夜間覚醒・昼夜逆転
- 🌡️ バイタル:「念のため」測る習慣
🔑 「あれ、いつもと違う」という直感を、データで裏付けよう。
👥
PAIR WORK・2人で
「訴えない患者」を
どう見抜く?
📋 場面:慢性期病棟のDさん(55歳・統合失調症)。最近、いつも見ているテレビを見ていない。食事量も少し減った。本人は「大丈夫」しか言わない。
📝 個人で30秒:あなたなら何を確認する?
🗣 ペアで2分:「私はまず◯◯を見る」「私は△△を聞く」と共有
⏱ 合計2分30秒
SECTION 2 ・ 30分
日常生活ケア
— 口腔・清潔・栄養・排泄 —
🦷 口腔ケア
精神科病棟で「歯」が崩壊する理由
- 💊 抗精神病薬の口渇副作用:唾液減少 → 虫歯急増
- 🪥 セルフケア能力低下:歯磨きを忘れる、雑になる
- 😶 痛みを訴えない:歯痛 → 食事拒否 → 栄養失調
- 🦠 誤嚥性肺炎リスク:口腔内細菌が増える
💡 看護師の毎日の口腔観察が、肺炎・栄養失調・痛みを防ぐ。
🍽️ 栄養・水分摂取
2つの極端に注意
📉 摂取不足
- うつ病・拒食
- 幻覚妄想(毒だ等)
- 脱水・低栄養
- 電解質異常
📈 過剰摂取
- 抗精神病薬の食欲亢進
- 運動制限による消費低下
- 水中毒(精神症状で水を飲み続ける)
- メタボリックシンドローム
⚠️ 水中毒は精神科特有の急変原因。低Na血症 → 痙攣・意識障害。
🚽 排泄ケア
便秘は「精神科ナースのKPI」
- 💊 抗精神病薬・抗うつ薬の抗コリン作用で便秘になりやすい
- 🚨 イレウス(腸閉塞)のリスク(重症化)
- 📋 看護師は排便日数を必ず記録
- 💧 水分・食物繊維・運動を促す
- 💊 必要時は緩下剤(マグミット等)
🔑 「3日出ていない」は要観察。「5日出ていない」は要介入。
🚿 清潔ケア
「お風呂入りましょう」が通じない時
- 🌀 陰性症状でセルフケア意欲低下
- 👻 幻覚妄想で「水が怖い」「裸になれない」
- 👀 看護師に裸を見られたくない(女性の羞恥心)
- 🧠 認知機能低下で手順がわからない
💡 「なぜ入りたくないか」を理解してから声かけ。「お風呂上がりに好きなジュース飲みましょうか」のような誘い水も。
👨👩👧👦
GROUP WORK・4人で
Eさんへのケアプランを
4人で立ててみよう
💡 ケアプランとは?
患者さんの「困りごと」に対して、「いつ・誰が・何を・どうやってケアするか」を具体的に決めた計画書。
観察・声かけ・処置などを優先順位をつけて並べる。
📋 場面:Eさん(68歳・うつ病)が入院。最近1週間、お風呂に入らず、食事量が普段の半分、便も3日出ていない。
📝 4人グループで6分:明日の日勤帯で「あなたたち看護学生チーム」が優先的に行うべきケアを3つ選んで理由とセットで発表できるように。
💡 「観察・声かけ・実施」のどれでもOK。
⏱ 合計6分
SECTION 3 ・ 15分
褥瘡・転倒予防
— 「動けない」「動かない」患者を守る —
🛏️ 褥瘡(じょくそう)予防
精神科で褥瘡が発生しやすい場面
- 🛌 陰性症状で1日中ベッド:圧迫が長時間続く
- 📉 低栄養・痩せ:骨が突出して圧が集中
- 💧 失禁・湿潤:皮膚が脆弱に
- ⛓️ 身体拘束中:体位変換できない
- 🦴 パーキンソン症状:自分で動けない
🔑 看護のキホン:2時間ごとの体位変換、栄養、皮膚保護、観察
🚷 転倒・転落予防
精神科の転倒は「複合リスク」
- 💊 抗精神病薬でふらつき・起立性低血圧
- 🦵 パーキンソン症状で歩行困難(小刻み・前傾)
- 🌪️ 夜間の興奮でベッドから飛び降り
- 👁️ 幻覚妄想で見えないものを避けようとする
- 👵 高齢化で筋力・バランス低下
💡 転倒スコア(FIM、FRAS)で事前リスク評価。環境調整(手すり・足元灯)も重要。
⚠️ 廃用症候群
「動かない」が「動けない」に変わる
廃用症候群(Disuse Syndrome)
長期臥床・運動不足により、筋力低下・関節拘縮・認知低下が進行する状態。
⚠️ 入院1週間で筋力10〜15%低下することも。
- 🚶 離床促進:朝の散歩・レクリエーション
- 💪 軽い運動:ストレッチ・ROM訓練
- 🤝 多職種連携:理学療法士・作業療法士と
SECTION 4 ・ 8分
振り返り
— 身体ケアは精神看護の土台 —
📝 今日のキーワード5つ
これだけ覚えて帰ってください
💬
GROUP WORK・4人で
「精神科看護師」と
「身体科看護師」の違いは?
📝 個人で1分:今日の学びを踏まえて、精神科看護師ならではの「身体ケアの強み」って何だろう?
🗣 4人グループで4分:共有して、「精神科ナースの強み」を1文に。
⏱ 合計5分
第108回 看護師国家試験 より(改題)
統合失調症の慢性期患者で
身体合併症のリスクが最も高いのはどれか。
- 1痛風
- 2結核
- 3メタボリックシンドローム ✨
- 4骨粗鬆症
正解:3
💡 解説
メタボが圧倒的に多い理由
- 💊 抗精神病薬(特に第二世代)→ 食欲亢進・脂質代謝障害
- 🛏️ 入院による運動量の減少
- 🍔 病院食 + 売店の高カロリー菓子
- 🚬 喫煙率も高い
🔑 国試では「精神疾患患者の身体合併症」=メタボ・糖尿病・心血管疾患と覚える。
水中毒の問題
統合失調症患者の水中毒について
正しいのはどれか。
- 1低カリウム血症が起こる
- 2低ナトリウム血症が起こる
- 3脱水症状が出る
- 4高血糖になる
正解は…
- 1低カリウム血症 ← 違う
- 2低ナトリウム血症 ✨ 水を大量に飲む→Naが希釈される
- 3脱水 ← 真逆
- 4高血糖 ← 関係ない
水中毒 → 低Na血症 → 痙攣・意識障害 までセットで覚える!
📅 次回予告
第5回(9/4)
「身体をケアする Part 2」
夏休み明け、精神科の薬に踏み込みます。
- 💊 抗精神病薬の副作用5大トピック(錐体外路症状・悪性症候群・QT延長・体重増加・高プロラクチン)
- ⚡ ECT(電気けいれん療法)の看護
- 🩺 メタボ・糖尿病・心血管疾患の合併症ケア
- 🌙 精神科の終末期ケアの視点
お疲れさまでした 🌱
精神科の看護師は「身体」も診られる人。
それが患者さんの命を、毎日守っています。
次回 9/4 また会いましょう(夏休みお元気で!)