第2回・90分・精神看護学各論
回復を支援する Part 2
〜 概念を「方法」に変える、実践プログラム編 〜
講師:古賀 慎一(精神科看護師)
2026年7月24日(金)/ 佐賀市医師会立看護専門学校 2年生
第110回 看護師国家試験 より(改題)
精神疾患患者のピアサポートについて
正しいのはどれか。
- 1看護師が患者に行う心理教育のこと
- 2同じ経験を持つ仲間同士が支え合うこと
- 3家族が患者に行う日常的な世話
- 4主治医が患者に提供する治療指針
🤔
答えは…
この90分の 最後 で明らかになります 🌱
📝 前回の振り返り
Part 1で学んだこと、覚えてる?
💡 今日は「これらをどう実現するか」、具体的な方法を学びます。
SECTION 1 ・ 15分
浦河べてるの家
— 北海道の小さな町から始まった、世界に誇る革命 —
🏠 浦河べてるの家とは
北海道・浦河町にある「精神障害者の地域共同体」
- 📍 1984年に設立、現在は約150名のメンバー
- 👥 統合失調症・うつ病など精神疾患を持つ「当事者」が中心
- 🏢 自分たちで会社を経営(昆布・スープなど商品販売)
- 📚 当事者研究・幻覚妄想大会など独自の取り組み
- 🌍 「世界一弱さに強い場所」と国際的に注目
💡 べてるの3大原則
常識をひっくり返す3つの思想
🍀
「非」援助の思想
援助しすぎない、自助力を信じる
💭 看護学校で習う「援助関係」と、ちょっと違いますよね?
🎤 当事者研究の例
「自分」を「研究対象」にする
べてるの家・Bさん(仮名)の研究テーマ
爆発しちゃう自分研究
〜キレる前に何が起きているか〜
- 🔍 仲間と一緒に、自分の症状を観察・分析
- 📋 トリガー、サイン、対処法をマップ化
- 🎯 苦労を「やっつける」のではなく「付き合う」
👥
PAIR WORK・2人で
あなたの「苦労」を
ちょっとだけ、研究してみる
📝 個人で30秒:あなたの「最近、繰り返してしまっている苦労」を1つ思い浮かべてください(睡眠、人間関係、勉強、何でも)
🗣 ペアで2分:「私の苦労は◯◯です。きっかけは△△で、いつもこうなる」と相手に話してみる
💡 気づき:「研究」してみると、不思議と少し他人事になりませんか?
⏱ 合計2分30秒
SECTION 2 ・ 25分
個人プログラム
— エビデンスのある4つのリカバリー支援 —
📚 今日学ぶ4つのプログラム
頭文字で覚えよう
📋
IMR
疾病管理とリカバリー
Illness Management & Recovery
💬
SST
社会生活技能訓練
Social Skills Training
🧠
CBT
認知行動療法
Cognitive Behavioral Therapy
🧘
MBCT
マインドフルネス認知療法
Mindfulness-Based CT
📋 IMR:疾病管理とリカバリー
「自分の病気と上手に付き合う」教育プログラム
- 🎯 目的:患者が自分で症状管理+目標達成できるように
- 📅 形式:週1回×9ヶ月、9つのモジュール
- 📚 内容:疾患理解 / ストレス管理 / 服薬 / 再発サイン / サポート活用
- 🌟 特徴:「指導される」ではなく「一緒に学ぶ」
💊 服薬指導の発展形。「飲ませる」ではなく「飲む意味を本人と探す」。
💬 SST:社会生活技能訓練
「人と関わる練習」をする
- 🎭 形式:ロールプレイ中心のグループ訓練
- 📋 場面例:「お店で物を返品する」「主治医に質問する」「仕事の依頼を断る」
- 👥 流れ:場面設定 → モデリング → 練習 → フィードバック → 宿題
- 🎯 目的:退院後の生活で困らない実用スキル習得
💡 「コミュ力は鍛えられる」が前提。陰性症状のある統合失調症患者にも有効。
🧠 CBT:認知行動療法
「思考のクセ」を整える
😞 ネガティブな自動思考
- 「私はダメな人間だ」
- 「みんな私を嫌っている」
- 「うまくいくはずがない」
🌱 バランスのとれた思考
- 「うまくいかない時もある」
- 「嫌う人もいるかも、でも全員ではない」
- 「やってみないとわからない」
うつ病・不安障害・PTSD・幻聴に効果のエビデンスあり
🧘 MBCT:マインドフルネス認知療法
「今、ここ」に意識を向ける
- 🌬️ 呼吸瞑想・ボディスキャンなどの実践
- 💭 ネガティブな思考を「変える」のではなく「気づく」
- 🎯 反芻思考(ぐるぐる悩むこと)を抑える
- 📊 うつ病の再発予防に高いエビデンス
🌊 思考は雲。流れていくのを、ただ観察する。仏教の瞑想を西洋医療に統合。
👨👩👧👦
GROUP WORK・4人で
4つのプログラム、
どれが今の自分に合いそう?
📝 個人で1分:IMR / SST / CBT / MBCT、もし「自分が当事者だったら」どれを試したい?理由も。
🗣 4人グループで4分:順番に発表。「私は◯◯。理由は△△だから」
💡 聞き手のルール:共感の相づちだけ。「いいね」「わかる」
⏱ 合計5分
SECTION 3 ・ 15分
WRAP
— 自分でつくる、私だけの「元気回復プラン」 —
📋 WRAP(ラップ)とは
Wellness Recovery Action Plan
自分でつくる、自分のための元気回復プラン
Mary Ellen Copeland(米・当事者)が1997年に開発
🌟 看護師が作るのではなく、当事者本人が作る
🌟 「医療者の手を借りすぎない」リカバリーツール
🛠 WRAPの6つの要素
自分の「元気の地図」を6ステップで描く
- ① 元気に役立つ道具箱:散歩・音楽・友達と話す等
- ② 日常生活管理プラン:毎日やることリスト
- ③ 引き金:何が調子を崩すか(人混み・睡眠不足)
- ④ 注意サイン:「ヤバい」と思う最初のサイン
- ⑤ 調子が悪いとき:本格的な不調時の対処
- ⑥ クライシスプラン:限界の時、誰に何を頼むか
SECTION 4 ・ 10分
ピアサポートと
自助グループ
— 「同じ経験」が、最強の薬になる —
🤝 ピアサポートとは
「Peer」=対等な仲間
同じ経験を持つ者同士が、対等な立場で支え合うこと。
医療者ではなく、当事者がサポートする側になる。
- 💬 「あなただけじゃない」が伝わる
- 🌱 専門家には言えない悩みも話せる
- 🎯 ピアサポーター(資格化されつつある)として就労する元当事者も
🌐 自助グループ・代表例
あなたが知っておくべき自助グループ
- 🍺 AA / 断酒会:アルコール依存症の自助会("12のステップ"が有名)
- 💊 NA:薬物依存症
- 🍩 OA:摂食障害
- 👨👩👧 家族会:精神疾患を持つ人の家族
- 🤲 べてる祭り:当事者の研究発表の場
💡 国試では「専門家が運営しない」「無料」が定番ポイント。
SECTION 5 ・ 10分
振り返り
— 概念を「方法」に変えた90分 —
📝 今日のキーワード5つ
これだけ覚えて帰ってください
💬
GROUP WORK・4人で
「当事者の力」とは何か、
4人で言語化してみよう
📝 個人で1分:「べてる」「ピアサポート」「WRAP」…これら全てに共通するのは何だと思う?
🗣 4人グループで4分:各自の答えを共有して、グループで「結論を1文」にまとめる
💡 答えは1つじゃない。グループの色を出してOK。
⏱ 合計5分
第110回 看護師国家試験 より(改題)
精神疾患患者のピアサポートについて
正しいのはどれか。
- 1看護師が患者に行う心理教育のこと
- 2同じ経験を持つ仲間同士が支え合うこと ✨
- 3家族が患者に行う日常的な世話
- 4主治医が患者に提供する治療指針
正解:2
💡 解説
「ピア」=同等・仲間がキーワード
- ❌ 1番「看護師が」← 専門家が行う = 違う
- ✅ 2番「同じ経験を持つ仲間」← これがピア!
- ❌ 3番「家族が」← 家族支援も大切だが、ピアではない
- ❌ 4番「主治医が」← 医療提供 = 違う
🌟 国試の「ピアサポート」問題は、「対等」「同じ経験」を含む選択肢を選ぶ!
WRAPの理解を試す問題
WRAP(元気回復行動プラン)の
特徴として適切なのはどれか。
- 1看護師が患者の状態に基づき作成する
- 2主治医が処方の一環として渡す
- 3当事者本人が、自分のために作成する
- 4家族会が運営する集団療法プログラムである
正解は…
- 1看護師が作成 ← 違う、主体は本人
- 2主治医が渡す ← 違う
- 3当事者本人が、自分のために作成する ✨
- 4集団療法ではない
WRAP = 当事者主体 = リカバリー思想の象徴
📅 次回予告
第3回(7/31)
「安全を守る」
次回はガラッとテーマが変わります。
- ⚠️ リスクマネジメントと行動制限
- 🆘 自殺予防戦略(WHO・TALK技法)
- 💪 暴力対応(HCR-20・CVPPP)
- 📋 身体拘束の3要件と倫理的問題
🌱 「自由」と「安全」の永遠のジレンマに向き合う90分。
お疲れさまでした 🌱
今日は 「方法」 を学びました。
次回は 「安全を守る」。患者さんと自分、両方を守る術を学びます。
次回 7/31 また会いましょう。